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~鼠径へルニア・臍へルニア~

【みんなのポケット】2023年2月号(NO.240)

今回お話するヘルニアは、「脱腸」や「でべそ」と呼ばれ、古くからある病気です。ヘルニアとは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態の事をいいます。「子どもの病気」というイメージを持たれがちですが、むしろ体の組織が衰えてくる中高年層に多い病気でもあります。

・鼠径(そけい)ヘルニア
足の付け根辺り(鼠径部)に、押すと戻る膨らみや引っ張られるような違和感がある場合は、鼠径ヘルニア(脱腸)が疑われます。日常的に重い物を運ぶ人や立ち仕事などの同じ姿勢を続けてきた人、肥満気味の人、加齢によって体の組織が衰えた中高年層の男性に多いです。子どもの場合、生まれつきによることが多いとされています。男児の場合、生まれる直前に精巣が陰嚢まで降りてきますが、この時に腹膜も一緒に引きずられ袋状になります。そこに腸などが入り込んでしまうことが原因とされています。

・臍(へそ)ヘルニア
へその周囲が膨らみ、子どもの「でべそ」として広く知られていますが、大人でも肥満や妊娠をきっかけに発生することがあります。幼児の場合、腹筋が未発達のため臍輪(へその緒の通り道)が下がりきらず、腸の一部が外に出てしまうことが原因とされています。

【症状】
最初は痛みがなく、くしゃみなどのお腹に力がかかった際に、一部が「ぷくっ」と膨らむことで気づくケースが多いようです。子どもの場合は、成長と共に筋肉が発達して治ることもありますが、大人の場合は自然治癒することはまずありません。そのままにしておくとどんどん大きくなり、場合によっては命に関わるような状態になることもあります。
初期の頃は、指で膨らみを押すと元に戻ります。しかし、患部が硬化すると元に戻らない嵌頓(かんとん)という状態になります。戻れなくなった腸はむくみ、締め付けが強くなることで壊死し、緊急手術が必要となる場合があります。

【治療】
有効な治療法は手術のみで薬での治療はできません。子どもの臍ヘルニアの場合は、綿球とテープを使って飛び出ている腸を内側に押し込む「圧迫療法」が行われます。異常を感じた際は、早めに医療機関を受診しましょう。