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漢方薬の一覧
補中益気湯について
ここでは、小児に対する補中益気湯の使い方についてご説明します。
補中益気湯
小児期の、便秘や下痢を含む胃腸虚弱や、風邪をひきやすい腺病体質や、食が細く疲れやすく虚弱な傾向を示すなどさまざまな病態に対して、自然治癒力に着目した本治(病気の根本要因を治療すること)として用いることができます。症状を緩和するための咳止めや整腸剤などと一緒に、補中益気湯を少量併用するのをご提案しています。あるいは、数カ月継続して服用することによって虚弱体質が改善します。具体的には、以下のような疾患に用います。
- 胃腸関連疾患:胃腸虚弱、食欲不振、便秘
- 皮膚関連疾患:アトピー性皮膚炎、寝汗、じんましん
- 神経関連疾患:神経症、頭痛、夜尿、不安神経症
- 呼吸器系疾患:気管支喘息、長引く気管支炎、慢性鼻炎
- 循環器系疾患:起立性低血圧
他に、疲労倦怠感、肩こり、冷え性、やせ、微熱などの不定愁訴にも有用です。
散剤と錠剤の2タイプがありますので、好みや年齢に応じて使い分けします。
葛根湯について
皆様よくご存じの「葛根湯」ですが、今回は少し詳しく解説したいと思います。
葛根湯
葛根湯:葛根、麻黄、大棗、桂枝(あるいは桂皮)、芍薬、生姜、甘草
寒気を伴うかぜの初期症状、首や背中のこわばり、頭痛、肩こり、筋肉痛など
「葛根湯」は、中国・後漢時代(25~220年)の医学書「傷寒論」に紹介されている処方で、古くから感冒治療薬として高名です。漢方医学では、急性熱性疾患の病態は時間経過に従い、太陽病→小陽病→陽明病→太陰病→少陰病→厥陰病という6つの病気によって進行していくという考え方がありますが、「葛根湯」は、初期で比較的体力のある太陽病期の処方とされています。原典では、うなじや背中がこわばって汗はかかずにぞくぞくする状態に用いると示されています。いわゆるかぜの初期です。この時期に投与する漢方薬は「葛根湯」や「麻黄湯」など麻黄や桂枝が入っている方剤が主体です。「かぜの初期に「葛根湯」を投与すると、生体の持つ免疫応答のメカニズムを促進させる」とも言われています。また、「葛根湯」はかぜ症候群ばかりでなく、頭痛、肩こり、筋肉痛などの疼痛治療にも多く用いられます。生薬として含まれている「芍薬」に痛みを抑える作用があります。
一般的に
- かぜの急性期に
- 「葛根湯」「麻黄湯」
- 虚弱者には
- 「麻黄附子細辛湯」「香蘇散」
- 症状が遷延する場合
- 「葛補中益気湯」「小柴胡湯」
- 咳がしつこくなってきた
- 「麦門冬湯」「清肺湯」
といったところでしょうか?
また、葛根湯には錠剤タイプも出ており、漢方薬は使ってみたいけど、
あの散剤の味や舌触りはちょっと…という方にご案内しています。
ぜひ一度お試ししてみてください。
当院でよく処方される漢方薬
当院でよく処方される漢方薬をご紹介します。
1 葛根湯
言わずと知れた風邪の初期などによく使われる漢方薬です。特に、ちょっと寒気のする場合などに好ましいです。また、肩こりも改善できます。
錠剤のタイプもありますので、漢方薬が苦手と思っている方にはぜひ試してみていただきたいです。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
19 小青竜湯
私は、咳、鼻水などの風邪症状に頻用します。また、スギ花粉症にも使いますが、一般的な市販の風邪薬や花粉症の薬を服用すると眠くなって困るという方には好ましいです。
錠剤のタイプもあります。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
27 麻黄湯
寒気を伴う風邪の初期に使います。葛根湯と似ていますが、発汗させる作用が特徴です。インフルエンザの初期に抗インフルエンザ薬と併用すると症状の改善がより速やかです。乳児の鼻詰まりにも作用があります。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
41 補中益気湯
補剤といって、体力が低下して起こってくるさまざまな症状の緩和に作用があります。全身倦怠感、食欲不振、夏バテなど。また、小児の気管支喘息やアトピー性皮膚炎など慢性疾患の悪化予防にも働きます。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
45 桂枝湯
比較的体力の低下した人の風邪の初期に用いられます。自然に汗の出やすい場合に作用があります。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
54 抑肝散
小児の夜泣き、かんの虫、おちつきのなさに用います。成人では神経過敏で眠れないとか、イライラするとかいった時に作用があります。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
95 五虎湯
小児に多く用いられる咳、喘鳴の薬です。成人でも用います。成人では「麦門冬湯」もしつこい咳に作用があります。
錠剤があります。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
99 小建中湯
言わずと知れた、小児の漢方薬。小児虚弱体質、よく腹痛を訴える子、夜尿症、便秘症など。
子どもの腹診(おなかを触る診察)をして、腹直筋を固くすることが使用する目安です。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
138 桔梗湯
のど痛のかぜに作用があります。私がお勧めする飲み方は、まずお湯で溶いて、そこに氷をバシャッといれてその冷えた溶液をのどによく触れるようにしてゆっくり飲む、といった感じです。2日くらいでうそのようにのどの痛みが和らぎます。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
2 葛根湯加川芎辛夷
風邪が長引いて鼻閉、鼻漏、後鼻漏などが目立った時に作用があります。蓄膿症、慢性鼻炎が適応症です。
錠剤があります。
※漢方薬名の左側の番号は、ツムラ医療用漢方製剤名の製品番号です。
漢方薬の錠剤について
漢方薬には錠剤もあります。
漢方薬は使ってみたいが、飲みにくいと敬遠する人が多いのですが、すべてではありませんが、錠剤のある漢方薬もあります。ぜひ診察室で、「漢方薬希望」と言ってください。相談に応じます。
錠剤のあるものは、葛根湯、小青竜湯、五虎湯(咳に著効)、小柴胡湯、葛根湯加川芎辛夷(鼻閉に効きます)などです。
漢方薬で改善されたケース
漢方薬で改善されたケースについてご紹介します。
- 7歳男児、頑固な便秘
数年前に頑固な便秘のため某総合病院小児科にて治療、下剤や浣腸を行ったが、本人がその処置を嫌い通院しなくなった。よくならないまま放置してしまい、便秘が悪化して困り、インターネットで漢方治療を求めて来院。腹部の触診にて腹直筋の緊張感を触知した。小建中湯の適応と考え、家族と相談。下剤は用いず、整腸剤と小建中湯5.0g/日を処方、2週間後の受診時には便秘が改善傾向であった。おおよそ1年くらい内服して終了した。 - 40歳女性、肩こり
生来の肩こり性。葛根湯がよいと伝えたところ希望。試しに使ってみて、と何日分かを処方した。何週間後かに来院し、以後2カ月に一度くらい来院し、葛根湯を持って帰る。 - 35歳女性、スギ花粉症
花粉症の薬がどれも眠くなって飲めないと、漢方治療を希望して来院。小青竜湯を紹介して使用したら、改善されたとのこと。以後毎年2月の初めに来院し、処方を希望。4月半ばくらいまで飲んでいる
漢方薬の飲ませ方(飲み方)
飲ませ方(飲み方)の工夫
漢方薬は試してみたいけど、ちょっと匂いがとか、粉薬は苦手とかの声はとても多いのが現状です。
しかし、私のところで1歳未満の赤ちゃんや1歳~2歳くらいの乳幼児に、これ試してみて?とあげる「小建中湯」が飲めない子どもはとてもまれです。
「小建中湯」が飲みやすい漢方薬ということもあるのですが、まずは、まずいという先入観を捨てることです。
次に、それでもどうしてもだめな場合は、お湯で溶いて(よく溶かすにはさらに電子レンジでチンする)そこに、甘い単シロップやココアや蜂蜜などを入れて飲んでみてください。まったく大丈夫のはずです。
ぜひお試しください。
病態の改善が期待されている漢方薬
少し詳しいお話です。
西洋薬は人工的に合成された単一成分の薬剤であるのに対し、漢方薬は自然界に存在するものを加工し(「生薬」といいます)、それを複雑に組み合わせたものです。しかも、その組み合わせが、すでに2,000年以上前からあったものが多いのです。その間、さまざまな使用が試され、今日に至っております。 そこで、西洋薬では到底太刀打ちできないような病態の改善に期待されている漢方薬があります。
*虚弱体質の子ども
かぜをひきやすい、すぐ熱を出す、慢性的に食欲がなく下痢や便秘になりやすいなど。
こんな症状に、西洋薬ではかぜをひいて咳がでれば「咳止め」、鼻水がでれば「鼻炎のくすり」、熱には「解熱剤」、下痢には「整腸剤」となってしまします。
こんな時に小児漢方の「小建中湯」です。
とても飲みやすく、作用が得られやすい薬剤です。漢方薬を初めて試してみたい場合にもってこいの薬剤です。
*疲れやすい子ども
漢方薬の中で「補剤」と言われる薬剤の代表選手が「補中益気湯」です。
急性疾患の治った後の体のだるさや、さまざまな原因から来る易疲労感、倦怠感など、すぐにごろごろしてしまうようなお子様、朝起きられない、食欲がないなどに適した薬剤です。また、私は難治性の「アトピー性皮膚炎」によく処方をいたします。
あと、アトピー性皮膚炎には「黄耆建中湯」という薬剤がよく使われます。
*夜泣き・夜驚症に
夜泣き、イライラなど、興奮しやすいお子様に、「甘麦大棗湯」と「抑肝散」。
夜泣きも夜驚症もいずれはなおっていく症状ですが、子育て中のご家族にとっては大きな問題です。
西洋薬では抗ヒスタミン剤や抗不安薬などを処方する場合もありますが、たいていは「もうしばらく頑張ってくださいね」といった感じで済ませてしまいがちです。こんな時に漢方薬で大いに期待できる2つの薬剤です。
少し長く飲んでもらって役に立つ漢方薬
今回は、少し長く飲んでもらって役に立つ漢方薬をご紹介します。
- 小建中湯 虚弱体質の子ども。よくお腹を痛がって体調が崩れがちな子どもや、保育園や幼稚園に行き始めて、頻繁に熱を出す子どもなどに使用すると丈夫になって熱をだしにくくなります。
- 補中益気湯 アトピー体質の子ども、喘息の治りにくい子ども、疲れやすい大人などに。
- 六君子湯 胃腸虚弱な大人に。
- 葛根湯 一般的には風邪の初期に使う薬ですが、肩こりのひどい人にも良いです。
- 小青竜湯 かぜの改善にも良いですが、花粉症に作用があります。
診察時に「漢方薬希望」と言ってくださればOKです。ぜひ、お試しください。
かぜの時に用いる漢方薬
今回は、私の好きな(私もよく服用する)漢方薬をいくつかご紹介します。
- 小青竜湯 風邪の鼻水、くしゃみ、咳などに効きやすく、花粉症にも作用あり
- 麻黄湯 風邪の初期の「ぞく、ぞく」したちょっと寒気を感じる時に
- 葛根湯 麻黄湯と同じような風邪の初期に
- 桂枝湯 同じ風邪の初期ですが、ちょっと熱感があり「ぽっぽっ」している感じの時
- 桔梗湯 のどの痛む風邪に
以上、かぜの時に用いる漢方薬をご紹介しました。漢方薬の良いところは、眠気などが出ないこと、咳や鼻水などがまだあまり目立たない時から使用可能であることなどでしょうか。一方難点は、錠剤がある漢方薬が少ない事(上記の中で錠剤があるのは、小青竜湯、葛根湯だけです)、また、錠剤でも1回に飲む錠剤が多い事などです。私は、お湯に溶いて、そのまま「がぶがぶ」飲んでしまいます。ぜひ、お試しを。
診察時に「漢方薬希望」と言ってくださればOKです。もちろんお子様もOKです。